婚約破棄後の結納金等

結納金

結納

結納は、現在は「堅苦しい儀式は嫌」などという理由(?)で行われないことも多くなったようです。
しかし、婚約の際に現在でも行われることもある金品を授受する慣習です。

そして、婚約が破棄・解消された場合に、結納金の問題が発生する代表的なケースは、以下の3パターンがあります。
そして、それぞれのケースに応じて、結納金を返還すべきかどうかが異なります。

(1)どちらの落ち度もなく解消された場合

そもそも何らかの原因があって婚約が解消されることが普通です。
したがって、どちらにも落ち度がないということは、私が相談を受けていてもあまりありません。
どちらにも落ち度がない場合は、話し合いですぐに解決されるから、行政書士等に相談しないのでしょう。

返還される

疑問

では、どちらにも落ち度がない場合、結納金はどうすべきなのでしょうか?

これについては、下記の判例にありますように、どちらにも落ち度がなく婚約が解消された場合には、結納金は返還されるべきとされております。

  • ※参考判例2(大審院大正6年2月28日)
  • 結納は、他日婚約が成立することを予想して授受する一種の贈与であって、婚約が後になって、当事者双方の合意の上、解除された場合には、当然その効力を失い、その給付を受けた者は、その目的物を相手方に返還すべき義務がある。

(2)与えた側に責任がある場合

具体的例を挙げて考えてみましょう。

正当事由のない破棄

太郎さんと花子さんが婚約し、太郎さんは花子さんに結納金100万円を贈りました。
ところが太郎さんは「他に好きな人ができたから、君とは結婚できない」と、一方的に婚約破棄したとします。

結納を与えた側(太郎さん)が正当事由なく(「他に好きな人ができた」は正当事由に該当しません。)破棄したケースです。
なお、どのような理由が正当事由に該当するかは、→こちらの婚約破棄の正当事由を参考にされてください。

返還義務はない

疑問

このようなケースで、太郎さんは花子さんに対して、「君とは結婚しないのだから、結納金は返してくれ!」と要求してきた場合、花子さんは結納金を返還する義務があるのでしょうか?

結論は「返還する義務はない」ということになります。

自らの責任で婚約破棄をしておきながら、結納の返還を請求することはできません。

  • ※参考裁判例3(大阪地裁昭和41年1月18日)
  • 婚姻予約が、合意により解除せられた場合などは別格として、破約の原因が専ら結納を交付した側にある場合においては、破約に対する制裁として、破約者は結納の返還を請求する権利を有しないとすることが、信義誠実の原則などに照らし結納を授受した当時における当事者の意思に合致するものである。
  • ※参考裁判例4(大阪地裁昭和43年1月29日)
  • 結納の授与者が自らの有責事由によって婚姻不成立の事態を招来したり、あるいは正当な事由もないのに婚約を破棄した場合には、信義則上、授与者はその返還を求め得ないと介すべきである。
ポイント

ここがポイント!


結納金を与えた側(男性)に婚約解消の原因があれば、結納金の返還義務はない。

(3)受け取った側にも責任の一部がある場合

具体的例を挙げて考えてみましょう。

太郎さんと花子さんが婚約し、太郎さんは花子さんに結納金100万円を贈りました。
ところが花子さんには婚約前から、長年想いを寄せていた別の男性がいました。

メール

「太郎さんと結婚するのだから」とその男性を忘れようとはしていましたが、不貞行為等は一切ないものの、心の中では忘れることはできず、たまにメールやLINEで連絡を取っていました。

すると頭にきた太郎さんは、花子さんをぶん殴って大怪我を負わせてしまい、そのことが原因で二人の婚約は解消されたとします。

誰が見ても、一番悪いのはぶん殴って大怪我を負わせた太郎さんですが、花子さんにも多少の原因がありますよね。

結納を受け取った側(花子さん)にも婚約解消の責任が一部あるケースです。

どちらの責任が重いかで返還義務は変わる

疑問

このようなケースで、太郎さんは花子さんに対して「君とは結婚しないし、婚約解消の原因は君にもあるのだから、結納金は返してくれ!」と要求してきた場合、花子さんは結納金を返還する義務があるのでしょうか?

裁判例では「結納者の責任が結納受領者の責任より重くないときに限り結納等の返還を許し、より重いときはその返還を請求することはできない」としています。

上記の例で言いますと「太郎さんの責任が花子さんの責任より重くなければ結納金は返してもらえるが、太郎さんの責任のほうが重いときは返還請求できない」ということです。

つまり、花子さんは太郎さんからの返還請求に応じる必要はありません。

  • ※参考裁判例5(福岡地裁小倉支部昭和48年2月26日)
  • 結納者及び結納受領者双方に婚約解消についての責任が存するときは、信義則上ないし権利濫用の法理からして、結納者の責任が結納受領者の責任より重くないときに限り結納等の返還を許し、より重いときはその返還を請求することはできないと解するべきである。
ポイント

ここがポイント!


結納金を受け取った側(女性)に婚約解消の責任があっても、与えた側(男性)の責任のほうが大きい場合は、結納金の返還義務はない。

嫁入り道具・結納返し

結納をする場合、一般的には男性側から結納金を贈り、女性側から一昔前であれば嫁入り道具を、現在では時計やスーツなどの結納返しを贈ることが多いと思います。

疑問

そこで、結納金については上記で説明しましたが、婚約が結婚に至らない場合、嫁入り道具や結納返しはどのように扱えば良いのでしょうか?

結論としては原則として、結納金の扱いと同じです。

男性側からの正当事由のない婚約破棄があったケースでみていきますが、考えられる解決方法は以下のどちらかでしょう。

(1)男性から返してもらう

このようにされる方も多いです。
ただ、嫁入り道具ならまだしも、時計やスーツを返却してもらっても女性には使い道がありませんし、売却するにしても二束三文にしかならないでしょう。

(2)男性に買い取ってもらう

疑問

もっとも、「返してもらっても、何だか縁起が悪そうでいやだわ。」と思われたり、使い道がないという女性も多いのではないでしょうか?

そのような感情をお持ちの場合は、財産的損害の賠償として買い取りを請求されればいいでしょう。

当然のことですが、買い取ってもらう場合は、嫁入り道具・結納返しの品は今後男性が所有することになります。

損害と認められるとは限らない

なお、嫁入り道具の購入費用を損害として認めた裁判例もあります。

しかし、「婚約解消によって道具の効用が減弱されるわけでもないし婚姻生活以外でも日常生活で使いうる」ということを理由に、嫁入り道具の購入費用を損害と認めない裁判例もあります。

慰謝料の額に影響する

計算

ただし、その裁判例でも、「日常これを使用したくない感情を持つことは、慰謝料額の算定にあたってこれを斟酌すべき事由となる」と判示しています。

つまり、嫁入り道具の購入費用は損害と認められないけれど、慰謝料の額に影響するとしています。

  • ※参考裁判例6(大阪地裁昭和42年7月31日)
  • 婚約に基づく婚姻の準備として購入した衣類などはいまだ挙式婚姻において使用されたことはなく、これをその感情のうえで使用したくないということのほかは婚約破棄によりその効用を全部若しくは一部でもこれを減弱したとの特段の主張立証もなく、挙式婚姻のほかは日常生活上不必要なものとも考えられないとして、その購入費用を目して婚姻破棄により蒙った損害とあるとはいえない。しかし、日常これを使用したくない感情を持つことは、慰謝料額の算定にあたってこれを斟酌すべき事由となることはいうまでもない。
ポイント

ここがポイント!


嫁入り道具・結納返しの品は(1)返還か(2)買い取りを請求できるが、財産的損害と認められるとは限らない。

婚約指輪

指輪

婚約の際、一般的には男性から女性に婚約指輪を贈ることが多いです。
もっとも、今は婚約指輪を購入しない男女も多いですけどね。

疑問

では、婚約が結婚に至らない場合、婚約指輪の扱いはどうなるのでしょうか?

婚約指輪についても原則として、上記で説明しました嫁入り道具・結納返しの扱いと同じです。

女性側に原因がある場合

まずは、女性側からの正当事由のない婚約破棄があったケースでみていきますが、考えられる解決方法は以下のどちらかでしょう。

  • (1)女性から返してもらう
  • (2)女性に買い取ってもらう
    (ただし、下記のように買い取りが認められる可能性は低いです。)

どちらを選んでも、女性から婚約指輪のお返しとして貰ったもの(時計など)は、返還する必要はありません。

原則として買い取りは認められない

慰謝料

婚約指輪を購入すると、一般的には数十万円はします。
ところが、それを売却するとなると、指輪の価値は暴落します。
数十万円で購入したものが数万円になると思っておいたほうが良いレベルです。

となると、男性側としては買い取りを請求したくなると思います。
しかし、原則として指輪の買い取りは認められないと思っておいたほうが良いです。

ポイント

ここがポイント!


女性側に婚約解消の原因がある場合、婚約指輪は(1)返還を要求するか(2)買い取りを請求すれば良いが、買い取り請求が認められる可能性は低い。

男性側に原因がある場合

疑問

逆に、男性側からの正当事由のない婚約破棄があったケースではどうなるでしょうか?

この場合も、以下のどちらかになるでしょう。

(1)女性がそのまま貰っておく

売却してもいいですし、手元においていてもいいです。
ただし、売却しても購入時の価格より大幅に下落します。

(2)気持ち悪いから男性に返す

「相手の記憶を抹殺したい」という方も多いようですので、「手元においておくなんて嫌」とばかりに、返される方もいます。

どちらを選んでも、女性から婚約指輪のお返しとして貰ったもの(時計など)は、返してもらうか、買い取ってもらうことを要求できます。

ポイント

ここがポイント!


男性側に婚約解消の原因がある場合、婚約指輪は(1)そのまま手元に置いておいても良いし(2)気持ち悪いから返還しても良い。

慰謝料はどうなる?

ここまでは主に損害賠償のうちの財産的損害について見てきましたが、損害賠償のメインとなることが多いのは慰謝料です。
では、慰謝料はどのような場合に発生し、どのように決まるのでしょうか?
それについては→次のページ(婚約破棄の慰謝料)で説明しています。

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