貞操侵害による慰謝料請求

婚約破棄の相談事例

婚約男女

婚約破棄・解消に関するご相談を受けていると、ご相談者としては婚約している(婚約していた)と考えている場合であっても、婚約が成立しているとまでは言えないような事例が多々あります。

婚約の不成立

六法

私人間の法律関係は一般的に「民法」という法律に定められています。
しかし、民法には婚約に関する規定はありません。
例えば、「○○したら婚約が成立する」というような条文はないのです。

もっとも、過去の判例からどのような場合に婚約が成立するかは判断可能です。
それによれば、婚約が成立するための最低限の条件として、男女双方が将来の結婚を誠心誠意約束する必要があります。

肉体関係を持つための結婚の申込みと承諾

疑問

では、男性が結婚する意思がないにも関わらず、女性と肉体関係を持ちたいがために「結婚しよう」と申し込み、女性もその申し込みを承諾した事例において、婚約は成立していたと言えるのでしょうか?

この事例では一見すれば男女間に将来の結婚の合意があるようにも思えます。
しかし、男性は単に女性と肉体関係を持ちたいだけで「結婚しよう」と申し込んだだけで、結婚の意思はありません。
したがって、将来の結婚を誠心誠意約束したとは言えません。
よって、婚約は成立していないのです。

指輪

もちろん、女性からすれば結婚の約束をしたのですから「婚約していた」と思うことでしょう。
しかし、その約束以外に婚約指輪や式場の予約もなければ、双方の両親への結婚の挨拶もしていない、勤務先にも結婚の予定を報告していないなどの場合は、口頭やメール、LINE等で結婚の約束をしていても、婚約成立とまで認められる可能性は低いでしょう。

どのような場合に婚約の成立が認められるかは、→こちらのページを参考にされてください。

婚約破棄の慰謝料

そして、当たり前の話ですが、成立していない婚約を破棄・解消することはできません。
そうすると、男女間の交際が終了したことによって精神的な損害を受けたとしても、婚約の破棄・解消を理由とした慰謝料等の請求も不可能ということになります。

貞操権、人格権の侵害

疑問

では、婚約が成立していないケースにおいては、男性が結婚してくれるものと信じて肉体関係に応じた後に一方的に正当な理由なく関係を解消されたとしても、泣き寝入りをするしかないのでしょうか?

そんなことはありません!

確かに、結婚する意思もないのに結婚をしようと申し込む、結婚をちらつかせて肉体関係を継続した場合は、婚約が成立していないので婚約破棄での請求は難しいと言わざるを得ません。

しかし、元交際相手の男性に対して、貞操権の侵害や人格権の侵害を理由に慰謝料を請求できる余地があります。

ポイント

ここがポイント!


婚約が成立していなくても、結婚をちらつかせて肉体関係を持てば、貞操権や人格権の侵害を理由に慰謝料請求できる余地がある。

慰謝料を認めた裁判例

裁判所

有名な裁判例があります。

これは結婚情報サービスの会員である女性の結婚願望を利用して、結婚する意思もないのにあたかも結婚を検討していることを装う一方、婚約や結婚の承諾をすることを巧妙に避けながら長期間性的関係を持ち、女性は妊娠中絶もせざるを得なくなって人生設計が大きく狂わされた事例です。

裁判所は、上記のことに加えて、男性はもし女性から慰謝料を請求された場合に備えて、言い逃れも考えたうえでの計画的な行為であったとも認定し、請求額満額の300万円を男性に支払うよう命じました。

  • ※参考裁判例(平成8年6月7日東京地裁)
  • 被告の行為は、結婚等のための交際相手を紹介する会社を利用して、結婚願望を有する女性に交際の 申込みをし、条件が整えば結婚してもよい旨の意向を示しながら当該女性と継続的に性的関係を持ち、結婚を迫られると、条件が整っていないとしてこれを拒むものであり、結婚する意思がないにもかかわらず、あたかも結婚を検討しているかのように装う一方、婚約ないし結婚の承諾をすることを巧妙に避けながら長期間性的関係の係属を図るものである。これに対して原告は、被告が自己紹介書に「お互いの人格を尊重し、心の安らぐ、明るい家庭をつくってゆきたいと思います」との原告あてのメッセージが記載されていたことを始めとして、被告の幾多の言動から、交際の当初より、結婚できるかもしれないと誤信して付き合いを続け、その結果、初めて身籠った子の妊娠中絶手術をせざるをえなくなるなど、人生設計を大きく狂わすこととなったものである。被告のこのような行為は、原告に対し、人格権侵害の不法行為を構成するものである。
ポイント

ここがポイント!


300万円の慰謝料を認めた裁判例も存在する。

既婚者と婚約は成立する?

一般的な婚約破棄・解消以外で、上記の貞操侵害による慰謝料と同じく当事務所に多く寄せられるご相談のひとつが、既婚者との結婚の約束の問題です。
相手方が既婚者である場合、既婚者との相手で婚約は成立するのでしょうか?
それについては→次のページ(既婚者との婚約)で説明しています。

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