婚約破棄の示談書作成

示談書作成の目的

示談書

婚約破棄の示談書(合意書・和解書)とは、話し合いで解決した様々なことを記録して和解が成立したことを証するとともに、婚約解消後の争いを未然に防ぐために作成するものです。
つまり、このような和解成立を証することと、将来の紛争を予防することが示談書作成の目的です。

将来争いの余地のある示談書

そのため、将来(問題の解決後)に争いの余地があるような内容の示談書では、それを作成する意味がないということになります。

具体例

例えば、示談書には一般的に「これで争いは全て解決しましたよ」「これ以上お互いに何も請求できませんよ」という内容の清算条項(債権債務不存在条項)を記載します。
しかし、ときどきこのような条項が入っていない示談書を見かけます。

「場合によっては再度慰謝料を請求しよう」等の意図があって清算条項を入れていないのでしょう。
しかし、これでは問題解決後の争いを未然に防ぐという示談書作成の目的が達成できません。
また、逆に支払った側から「よく考えたら払い過ぎだと思うので一部を返して欲しい」と要求される余地を残しているということにすらなります。

タイトル

タイトルは、示談書、合意書、和解契約書、和解書、契約書など何でも結構です。
極端な話、タイトルなしで、いきなり本文から作成しても問題ありません。
もっとも、タイトルがあると書面が全体的に締まると思いますので、タイトルは入れたほうがいいでしょう。

法的効果の違い

疑問

では、示談書、合意書、和解契約書、和解書、契約書などのタイトルによって、何か法的に効果が変わるのでしょうか?

当事務所は、示談書を「合意書」というタイトルで作成することもよくあります。
すると、当事務所に示談書の作成をご依頼いただいた方から「示談書じゃないのですか?」とか「示談書と和解契約書では何が変わるのでしょうか?違いを教えてください」と質問されることがあります。

六法

結論としては、示談書、合意書、和解契約書、和解書、契約書等のタイトルによって、何か法律的な効果が変わるということはありません。

どちらかと言うと、和解契約書や合意書が柔らかい感じがして、示談書は硬い感じがするというような、いわば気分の問題ぐらいです。

ポイント

ここがポイント!


示談書は和解の成立を証し、今後の紛争を防ぐために作成するものであって、タイトルは合意書でも和解契約書でも何でも構わない。

作成の必要性

疑問

ときどき当事務所に、「元婚約者は慰謝料を一括払うと言っています。このような場合でも、示談書の作成は必要ですか?」という質問が寄せられます。

ご相談される方としては、相手が払うと言っているのだから、わざわざ堅苦しい書面を作成する必要がないのではないか?と思われるのでしょう。

しかし、そのような場合でも、示談書の作成は間違いなく必要です。

円満に問題が解決したつもりでも、口約束では安心できないからです。

慰謝料を受け取る側にとって

お金

例えば、「慰謝料を100万円支払います。」と約束したとします。
しかし、いつ払うのか、どのような方法で払うのかなどを決めておかないと、後日必ずもめることになるでしょう。
そもそも、「口約束だけでは、本当に支払ってもらえるかも怪しいものです。

つまり、慰藉料を受け取る側にとっては、上記のような口約束だけでは安心できないところを、示談書を作成することによって、支払いを確保できる可能性が高まるのです。

慰謝料を支払う側にとって

一方、慰藉料を支払う側にとっても、きちんとした示談書を作成しておけば、何度も請求される心配がなくなります。

請求

「あのとき払われた慰謝料は一部だから、もう少し払って」というように言ってくる人は、想像以上にいるものです。

そのような再度の請求を受けないためにも、「これ以上は請求しない」ということを明記した示談書の作成が必要なのです。

お互いに請求しないことに合意した場合

また、財産的損害や精神的損害(慰謝料)をお互いに請求しないことに口約束で合意した場合でも、「あのときは慰謝料がいらないと言ったけど、やっぱり払って」というように言ってくる人もいます。
そのため、仮にお互いに何も請求しないと合意したとしても、その旨を書面で残しておくことが重要です。

ポイント

ここがポイント!


口約束では安心できない!
請求者側にとっても、支払う側にとっても作成のメリットがある。

どちらが作成するか?

婚約破棄の問題は、当たり前の話ですが、男性と女性の問題です。
つまり、このような問題の当事者は二人いることになります。

疑問

では、示談書はどちらが作成すれば良いのでしょうか?

このことも当事務所によく寄せられる質問ですが、どちらが作成しても良いのです。

印鑑

というのも、示談書にはお互いがその内容について合意した後に署名捺印することになります。

そうすると、相手方が作成した示談書が気に食わなければ、署名捺印しなければいいだけですからね。

作成した側が有利

しかしながら、どちらかと言うと作成した側のほうが有利でしょう。

加害者側は異議を出しにくい

特に、被害者側が作成すると、加害者側は負い目があるため、原案に異議を出しにくい(そんな気持ちが全くない人もいますが……)です。

この意味、分かりますよね!

異議が出たら引っ込めれば良いだけ

また、相手方が記載内容について異議を出してこなければそれに署名捺印することになります。
そうすると、異議が出たら引っ込めようぐらいの気持ちで、作成する側は最初に自由な条項を記載できます。

この観点からも、作成した側が有利であると言えるでしょう。

ポイント

ここがポイント!


示談書はどちらが作成しても良いが、作成者側が有利なことが多い。

何を記載するか?

疑問

では、示談書には何を記載するのでしょうか?

一口に婚約破棄と申しましても、いろいろなケースがあります。

例えば、元婚約者同士が猛烈(?)に憎しみ合っている場合と、今後も友達でいようというような場合もあることでしょう。
これらの場合の記載内容は異なることになります。

また、財産的損害が発生したケースと、発生しないケース(結婚式場の予約や、新居契約にまで至っていないなど)もあるでしょう。

ですから、何を記載するかはケースによって異なるのです。
もっとも、一般的に以下の条項は入れることが多いです。

(1)事実関係

婚約をしていたという事実や、どちらがどういう理由で、いつ婚約破棄を申し出たなどの事実関係が記載されます。

(2)財産的損害の額と支払い方法

慰謝料

財産的損害をまとめて、「財産的損害として金○○万円」という記載でもいいです。
また、より詳細に「結婚式場キャンセル費用として金○○万円、新居契約費用として金○○万円、家財道具購入費用として金○○万円」などと記載することもあります。

一括で支払う場合

これらを一括で支払うのであれば、「平成○年○月○日限り支払う」と記載することになります。
なお、「限り」というのは日常用語で言えば「までに」という意味です。

分割で支払う場合

一方、分割になる場合は、月々いくら支払うのか、あるいは最初の支払い時に出来る限り払ってもらい、残りを月々何万円ずつなどと記載することになります。

振込手数料など

また、支払い方法に関しては、どのような方法をとるかも記載しておく必要があるでしょう。
銀行振り込みが一般的ですが、別に手渡しにしても、現金書留で郵送してもいいわけです。

その際には、銀行振り込みの手数料はどちらが負担するのか、現金書留の郵送代金はどちらが負担するかも記載することをお勧めします。
(支払う側が負担することが普通です。)

(3)精神的損害(慰謝料)の額と支払い方法

慰謝料

精神的損害に対する賠償金のことを慰謝料と言いますが、一般的には、「慰謝料として金○○万円」と記載し、「精神的損害として金○○万円」とは記載しません。
なお、慰謝料という文言に抵抗がある人もいるので、あえて解決金という文言にすることもよくあります。

その他の支払い方法についての記載については、財産的損害の記載方法と同じです。

(4)元婚約者同士の一切の関わりを絶つ約束

元婚約者同士が猛烈に(?)憎しみ合って婚約解消となる場合などは、この条項を入れることがあります。

ただ、「婚約は解消になったけど、これからも友達でいようね」というような人も中にはいます(あまりいませんが‥‥)ので、その場合は、当然このような条項を入れることはありません。

(5)債権債務の不存在条項

示談書は、話し合いで解決した様々なことを記録し、今後の争いを未然に防ぐために作成するものですから、紛争の火種を残しておくことは避けるべきです。

そのため、この債権債務不存在条項を入れておくことをお勧めします。

この債権債務不存在条項は、「もうこの示談書に記載した以外では、お互いに何の債権債務もありませんよ」という意味です。

もっと分かりやすい言葉なら、「もうこの示談書に記載されたもの以外では、お互いに何かを請求する権利も、支払う義務もありませんよ」という意味です。

(6)強制執行認諾約款付公正証書作成の合意

疑問

この「強制執行認諾約款付公正証書」とはどのようなものでしょうか?

まず、これは「きょうせいしっこうにんだくやっかんつきこうせいしょうしょ」と読みます。

作成した場合の効果

仮に、財産的損害と慰謝料の合計金額が200万円で双方が合意したとします。
しかしながら、相手方には預貯金がありません。
そこで「預貯金がないから、毎月5万円ずつ40回払いにしてほしい」という要望があっとしましょう。

分割払いの受け入れ

請求

この場合「消費者金融から借りてこい!」「親兄弟から借りてこい!」などと言うことは脅迫にあたります。
したがって、言いたい気持ちは分からないでもありませんが、慎むべきです。

ないものを出せとは言えませんから、その分割払いの要望を受け入れるとします。
そして、その内容で示談書を作成したとしましょう。

示談書を作成しただけの状態で支払いが止まった

裁判所

示談書を作成しただけの状態で月々の支払いが止まった場合、その示談書を証拠にして、「こいつは毎月5万円ずつ支払うと約束したのに、支払いをしない!」と裁判所に訴訟を起こすことになります。

そして、「あなたは示談書で約束した通り、毎月5万円ずつ支払いなさい」という判決をもらわなければ、強制的に取り立てることはできません。

つまり、その判決を得た後に、強制執行の手続に移り、給与を差し押さえるなどして支払いを受けることになります。

強制執行認諾約款付公正証書を作成した後に支払いが止まった

ところが、示談書を作成した後に、それを強制執行認諾約款付公正証書にしておけば、上記の訴訟を省略することが可能です。

支払停止→訴訟→強制執行という順序を、支払い停止→強制執行という具合に、いきなり給与差押等の強制執行が可能なのです。

作成には債務者の同意が必要

ここで一つ注意していただきたいことは、強制執行認諾約款付公正証書は、「支払いが滞った場合に、いきなり強制執行されることに同意します」という公正証書です。

この公正証書を作成するには、債務者(慰謝料等を支払う側)の同意が必要なので、債権者(慰謝料等を受け取る側)が勝手に作成することはできません。

全国どこの公証役場でも作成できる

この強制執行認諾約款付公正証書は、公証役場で作成してもらいます。
全国に公証役場は多数ありますが、そのどこで作成しても構いません。
例えば、一方は神奈川県に住んでおり、他方は千葉県に住んでいる場合などは、間の東京都にある公証役場で作成することも可能です。

その際は、事前に作成しておいた示談書を原案にして、公証役場で強制執行認諾約款付公正証書を作成することになります。

どちらが作成費用を負担するかを明記しておくべき

また、公正証書作成は無料ではなく、公証役場に手数料を支払うことで作成してもらえますし、この費用が数万円必要な場合もあります。

ですから、この公正証書作成に要する費用はどちらが負担するのかについても、示談書に記載しておくことをお勧めします。
(債務者側=慰謝料を支払う側が負担することが一般的です)

なお、公正証書の作成についての詳細や具体的手順については、→こちらの婚約破棄の公正証書作成をご覧ください。

ポイント

ここがポイント!


支払いが分割になる場合は、公正証書を作成する旨とその費用負担についても記載しておく。

専門家に作成を依頼する意味

一般の方が作成した婚約破棄の示談書は、無効な記載が非常に多く見受けられます。

公序良俗に反する内容は無効

六法

極端な例ですが「慰謝料を払えなければ、死にます」などという示談書を作成し、署名捺印しても、それは公序良俗に反して無効です。
なお、公序良俗に反して無効とは、「常識はずれの契約は無効」という意味とお考えください。

私が実際に相談者の方から見せていただいた示談書で一番すごかった(?)ものは、「慰謝料を支払えなければ、腕を切り落として保険金で払います」というのがありました……
当然、その条項は公序良俗に反しますから無効です。

そのため、仮に慰謝料を支払わなかったとしても、腕を切り落とす必要はありません。
このことは常識で考えていただいても分かるかと思います。

無茶苦茶な内容もダメ!

上記以外にも、無茶苦茶な示談書をよく見受けます。

「記載した示談書を作成したが、慰謝料を払ってくれないのですが……」というご相談が、当事務所に頻繁に寄せられます。

その示談書を拝見すると、無効な記載や、読む人によって何とでも取れるようなあやふやな記載が多く、折角作った示談書が紙切れ同然のようになっていることもあります。

支払いを受ける側

後悔

支払いを受ける側にとっては、婚約を破棄されただけでも大変な精神的苦痛を受けています。
そのうえ慰謝料等の支払いを受けることができなくなったというようなことになれば、最悪の事態でしょう。
それも示談書の作成ミスで……

支払う側

また、支払う側にとっても、きちんとした示談書を作成しておかなかったばかりに、一旦支払ったのに、「足りない!」などと1年後ぐらいに言われて、また請求されて嫌な思いをする可能性もあります。

双方に有益

このようなことにならないためにも、きちんとした示談書を作成しておくことは双方にとって有益なのです。

そこで、経済的に許されるなら、弁護士や行政書士等に作成の依頼をされたほうが安心です。

ポイント

ここがポイント!


個人で作成した示談書は無効な記載が多く見受けられ、そのような無効な記載があれば作成の意味がなくなるので、専門家に作成を依頼したほうが安心。

より早く簡単に解決する方法は?

それでは、内容証明郵便等を送るのではなく、示談書を使ってより早く簡単に解決する方法はないのでしょうか?
それについては→次のページ(示談書を準備した婚約破棄慰謝料請求)で説明しています。

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