婚約破棄の慰謝料

婚約は契約

婚約男女

婚約とは「将来夫婦になろう、結婚しよう」という約束でありますから、契約の一種です。

破棄・解消は債務不履行

六法

このように婚約が契約である以上、正当事由がないにも関わらず、婚約を破棄・解消した場合は債務不履行(契約違反・約束違反)となります。

そして、その債務不履行によって相手方に与えた財産的損害及び精神的損害を賠償する必要があります。
どのような理由が正当事由に該当するかについては、→こちらの婚約破棄の正当事由を参考にされてください。

なお、婚約破棄・解消は不法行為であるとの説もありますが、債務不履行であるとするほうが判例においても一般的のようですし、時効や立証の点で有利であることが多いです。

債務不履行による精神的損害に対する賠償金が慰謝料

つまり、婚約破棄によって財産的な損害と精神的な損害が生じうるのですが、このうちの精神的損害(精神的苦痛)に対する損害賠償金のことを慰謝料といいます。

精神的苦痛を金銭で償うことは本来不可能

苦痛

確かに、精神的な苦痛を金銭で償うことなど本来は不可能なことだと思います。
婚約破棄によって受けた精神的な痛みや苦しみは、その本人にしか絶対に分かりません。
また、金銭で償われた(慰謝料を払われた)からといって、痛みや苦しみがなくなるわけではないでしょう。

結婚を強制することは不可能

しかし、刑事事件にして婚約破棄をした相手を警察に逮捕させることや、強制的に結婚させるなどは不可能なのです。
なお、結婚を強制できるかについては、→こちらの婚約破棄と婚姻の強制を参考にされてください。

慰謝料で苦痛を緩和する以外に方法はない

そこで、慰謝料の支払い以外に婚約破棄の責任を取らせる方法が他にない以上、慰謝料を支払わせることによって、受けた痛みや苦しみを多少なりとも緩和させることしかできないのも現実です。

ポイント

ここがポイント!


慰謝料を支払わせても痛みや苦しみが完全になくなることはないが、それ以外に責任を取らせる方法はない以上、慰謝料を支払わせることによって痛みや苦しみを緩和させることが現実的。

裁判例から見る慰謝料額

慰謝料

気になる慰謝料額ですが、昔(昭和30年代など)の裁判例では、非常に認容額が低いものが目立ちます。
しかし、それに比較すれば近年はいくらか高額となってきています。

ただ、現実問題として持ってないものを支払うことはできません。
そのため、相手方の預貯金や収入が少ない場合はそれほど高額を望めないことが多いです。

低額なもの

  • ※参考判例1(最高裁判決昭和38年12月20日)
  • 慰謝料額:10万円(現在の価値で44万5千円程度)
  • ※参考裁判例2(東京家裁審判昭和41年2月14日)
  • 慰謝料額:15万円(現在の価値で57万1千円程度)
  • ※参考裁判例3(大阪地裁判決昭和42年7月31日)
  • 慰謝料額:14万7千円(現在の価値で53万9千円程度)

一般的なもの

  • ※参考裁判例4(東京高裁判決昭和48年4月26日)
  • 慰謝料額:50万円(現在の価値で123万5千円)
  • ※参考裁判例5(東京地裁判決平成6年1月28日)
  • 慰謝料額:100万円(現在の価値で99万2千円程度)
  • ※参考裁判例6(福岡地裁小倉支部判決昭和45年12月4日)
  • 慰謝料額35万円(現在の価値で107万6千円程度)

高額なもの

  • ※参考裁判例7(大阪地裁判決昭和40年7月9日)
  • 慰謝料額:100万円(現在の価値で368万4千円程度)
  • ※参考裁判例8(大阪地裁判決昭和58年3月28日)
  • 慰謝料額:500万円、弁護士費用50万円(現在の価値で652万円程度)

裁判所による慰謝料額算定要素

計算

裁判所が婚約破棄の慰謝料額を算定するにあたっては、以下のような様々な要素が考慮されています。
そして、このうちで特に重要なのが(4)の破棄理由と、(6)の破棄時期(どれだけ結婚準備が進んだか)のようです。

もっとも、裁判例が必ずしも明確な基準を裁判所が示しているわけではなく「一切の事情を考慮すれば、原告(慰謝料を請求している人)の精神的損害は金100万円が相当である」などと、「適当に決めているの?」としか思えないような裁判例も多いです。

なお、慰謝料額については→こちらの婚約破棄の慰謝料の計算も参考にされてください。

(1)当事者双方の年齢

年齢が高いほうが、高額になる傾向にあります。

(2)社会的地位

社会的地位が高いほうが、高額になる傾向にあります。

(3)収入、資産

支払い能力がない人に、多額の慰謝料は望めません。
収入、資産が多いほうが、高額になる傾向にあります。

(4)破棄理由

「性格が合わない」「他に好きな人がいる」などの一般的(?)な理由の場合はそれほど高額は望めません。
逆に、被差別部落出身、人種差別を理由とした婚約破棄のほうが、違法性が高いために高額になる傾向にあります。

(5)経緯

婚約期間が長かった場合のほうが、高額になる傾向にあります。

(6)破棄時期

婚約が成立してすぐに破棄した場合と比較すると、挙式直前など、結婚準備が進めば進むほど、高額になる傾向にあります。

(7)性交渉の有無

性交渉がない場合と比較すると、あった場合の方が慰謝料額も高額になる傾向にあります。
もっとも、婚約までに至る近年の男女交際では、性交渉があることが普通でしょう。

(8)同棲、出産の有無など

婚約中に同棲や出産の事実があれば、高額になる傾向にあります。

これらを総合して、婚約破棄の慰謝料の金額を裁判所は決定しています。

高額な裁判例の理由

裁判所

参考裁判例7は現在の価値で368万円程度、参考裁判例8は現在の価値で652万円程度と、かなり高額です。
これだけ高額になった理由は、以下のような事情があるからです。
そのため、一般的な事例でこのような高額は望めないとお考えください。

女性の顔に大きな傷を負わせ、妊娠中絶した後に破棄

参考裁判例7は、婚約中に男性が女性を乗せた車で事故を起こし、女性の顔に大きな傷を負わせたうえに、妊娠中絶までしたにも関わらず、男性側が一方的に破棄をした事例です。
ひどい話です……

被差別部落出身を理由に破棄

参考裁判例8は、女性が被差別部落出身だったことにより、男性の両親が大反対し、破棄となった事例です。

婚約を破棄した男性と両親に連帯責任を負わせていますが、「著しく公序良俗に反する行為と評すべく」「婚約破棄の違法性が極めて強いこと」などと判決文に記載されており、このような理由の場合は高額になります。

ポイント

ここがポイント!


慰謝料額は様々な事情を考慮して決定されるが、結婚準備の進み具合と破棄理由が特に大きな影響を与える。

慰謝料の相場は?

結婚準備の進み具合と破棄理由が慰謝料額に大きな影響を与えますが、気になるのは慰謝料額の相場だと思います。
では、一般的に慰謝料はいくらぐらいが相場となるのでしょうか?
それについては→次のページ(婚約破棄慰謝料の相場)で説明しています。

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