婚約破棄後の結納金等

法的性質

納は、現在は「堅苦しい儀式は嫌」などという理由(?)で行われないことも多くなったようですが、婚約の際に金品を授受する慣習であり、法律に「結納とはこういうものである」というような条文があるわけではありません。

そのため、結納の法的性質としては、学説などでも以下のようにいろいろな意見がありますが、判例では(3)の考えに近いようです。

  • (1)手付説・・・契約の証としての手付という説です。
  • (2)贈与説・・・贈与であると考える説です(さらに解除条件付贈与説と目的的贈与説に分かれます)
  • (3)折衷説・・・(1)と(2)の折衷案です。
  • ※参考判例1(最高裁昭和39年9月4日)
  • 結納は、婚約の成立を確証し、併せて、婚姻が成立した場合に当事者ないし当事者両家間の情誼を厚くする目的で授受される一種の贈与である。

結納金

約解消時に結納金の問題が発生する代表的なケースは、以下の3パターンがあります。

(1)婚約がどちらにも落度もなく、合意によって解消された場合

そもそも何らかの原因があって婚約が解消されることが普通なので、どちらにも落度がないということは、私が相談を受けていてもあまりない(どちらにも落度がない場合は、話し合いですぐに解決されるから、行政書士等に相談しない?)のですが、結納金は返還されるべきとされております。

  • ※参考判例2(大審院大正6年2月28日)
  • 結納は、他日婚約が成立することを予想して授受する一種の贈与であって、婚約が後になって、当事者双方の合意の上、解除された場合には、当然その効力を失い、その給付を受けた者は、その目的物を相手方に返還すべき義務がある。

(2)結納を与えた側が正当事由なく婚約破棄をした場合、又は、結納を与えた側が婚約破棄される原因を作った場合

具体的例を挙げて考えてみましょう。

太郎さんと花子さんが婚約し、太郎さんは花子さんに結納金100万円を贈りました。ところが太郎さんは「他に好きな人ができたから、君とは結婚できない」と、一方的に婚約破棄したとします。

結納を与えた側(太郎さん)が正当事由なく(「他に好きな人ができた」は婚約破棄の正当事由に該当しません)婚約を破棄したケースです。

このようなケースで、太郎さんは花子さんに対して、「君とは結婚しないのだから、結納金は返してくれ!」と要求してきた場合、花子さんは結納金を返還する義務があるのでしょうか?

結論は「返還する義務はない」ということになります。

自らの責任で婚約破棄をしておきながら、結納の返還を請求することはできません。

  • ※参考判例3(大阪地裁昭和41年1月18日)
  • 婚姻予約が、合意により解除せられた場合などは別格として、破約の原因が専ら結納を交付した側にある場合においては、破約に対する制裁として、破約者は結納の返還を請求する権利を有しないとすることが、信義誠実の原則などに照らし結納を授受した当時における当事者の意思に合致するものである。
  • ※参考判例4(大阪地裁昭和43年1月29日)
  • 結納の授与者が自らの有責事由によって婚姻不成立の事態を招来したり、あるいは正当な事由もないのに婚約を破棄した場合には、信義則上、授与者はその返還を求め得ないと介すべきである。

(3)結納を受け取った側にも婚約解消の一端があった場合

具体的例を挙げて考えてみましょう。

太郎さんと花子さんが婚約し、太郎さんは花子さんに結納金100万円を贈りました。ところが花子さんには婚約前から、長年想いを寄せていた別の男性がいました。

「太郎さんと結婚するのだから」とその男性を忘れようとはしていましたが、不貞行為等は一切ないものの、心の中では忘れることはできずにいました。

すると頭にきた太郎さんは、花子さんをぶん殴って大怪我を負わせてしまい、そのことが原因で二人の婚約は解消されたとします。

誰が見ても、一番悪いのは太郎さんですが、花子さんにも多少の原因がありますよね。

結納を受け取った側(花子さん)にも婚約解消の一端があるケースです。

このようなケースで、太郎さんは花子さんに対して「君とは結婚しないし、婚約解消の原因は君にもあるのだから、結納金は返してくれ!」と要求してきた場合、花子さんは結納金を返還する義務があるのでしょうか?

判例では「結納者の責任が結納受領者の責任より重くないときに限り結納等の返還を許し、より重いときはその返還を請求することはできない」としています。

上記の例で言いますと「太郎さんの責任が花子さんの責任より重くなければ結納金は返してもらえるが、太郎さんの責任のほうが重いときは返還請求できない」ということです。

つまり、花子さんは太郎さんからの返還請求に応じる必要はありません。

  • ※参考判例5(福岡地裁小倉支部昭和48年2月26日)
  • 結納者及び結納受領者双方に婚約解消についての責任が存するときは、信義則上ないし権利濫用の法理からして、結納者の責任が結納受領者の責任より重くないときに限り結納等の返還を許し、より重いときはその返還を請求することはできないと解するべきである。

嫁入り道具

納をする場合、一般的には男性側から結納金を贈り、女性側から嫁入り道具を贈ることが多いようです。

そこで、婚約が結婚に至らない(婚約破棄された)場合、結納金については上記で説明しましたが、嫁入り道具の扱いはどうなるのでしょうか?

原則として、結納金の扱いと同じです。

男性側からの正当事由のない婚約破棄があったケースでみていきますが、考えられる解決方法は以下のどちらかでしょう。

(1)男性から返してもらう

このようにされる方も多いです。

(2)男性に買い取ってもらう

「返してもらっても、何だか縁起が悪そうでいやだわ。」と思われる女性も多いのではないでしょうか?

そのような感情をお持ちの場合は、財産的損害の賠償として買い取りを請求されればいいでしょう。

当然のことですが、買い取ってもらう場合は、嫁入り道具は今後男性が所有することになります。

なお、嫁入り道具の購入費用を損害として認めた判例もありますが、「婚約解消によって道具の効用が減弱されるわけでもないし婚姻生活以外でも日常生活で使いうる」ということを理由に、嫁入り道具の購入費用を損害と認めない判例もあります。

但し、その判例でも、「日常これを使用したくない感情を持つことは、慰謝料額の算定にあたってこれを斟酌すべき事由となる」と判示し、嫁入り道具の購入費用は損害と認められないけれど、慰謝料で埋め合わせできる(慰謝料額のアップ)としています。

  • ※参考判例6(大阪地裁昭和42年7月31日)
  • 婚約に基づく婚姻の準備として購入した衣類などはいまだ挙式婚姻において使用されたことはなく、これをその感情のうえで使用したくないということのほかは婚約破棄によりその効用を全部若しくは一部でもこれを減弱したとの特段の主張立証もなく、挙式婚姻のほかは日常生活上不必要なものとも考えられないとして、その購入費用を目して婚姻破棄により蒙った損害とあるとはいえない。しかし、日常これを使用したくない感情を持つことは、慰謝料額の算定にあたってこれを斟酌すべき事由となることはいうまでもない。

婚約指輪

約の際、一般的には男性から女性に婚約指輪を贈り、女性から男性に時計などを贈ることが多いようです。

そこで、婚約が結婚に至らない(婚約破棄された)場合、婚約指輪の扱いはどうなるのでしょうか?

原則として、上記で説明しました嫁入り道具の扱いと同じです。

女性側からの正当事由のない婚約破棄があったケースでみていきますが、考えられる解決方法は以下のどちらかでしょう。

  • (1)女性から返してもらう
  • (2)女性に買い取ってもらう
    (但し、嫁入り道具同様に損害と認められるとは限りません)

どちらを選んでも、女性から婚約指輪のお返しとして貰ったもの(時計など)は、返還する必要はありません。

男性が正当事由なく婚約破棄した場合の嫁入り道具の扱いと、女性が正当事由なく婚約破棄した場合の婚約指輪の扱いは同じです。

逆に、男性側からの正当事由のない婚約破棄があったケースではどうなるでしょうか?

この場合も、以下のどちらかになるでしょう。

(1)女性がそのまま貰っておく

売却してもいいですし、手元においていてもいいです。

(2)気持ち悪いから男性に返す

「相手の記憶を抹殺したい」という方も多いようですので、「手元においておくなんて嫌」とばかりに、返される方もいます。

どちらを選んでも、女性から婚約指輪のお返しとして貰ったもの(時計など)は、返してもらうか、買い取ってもらうことを要求できます。

つまり、結納金は男性側に婚約解消の責任がなければ戻ってくるし、男性側に責任があれば戻ってきません。

また、嫁入り道具購入、婚約指輪購入などにかかった費用は、正当事由なく婚約破棄した側、又は婚約破棄されても仕方ない原因を作った側が負担するというのが原則となります。

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