不倫後に作成する配偶者との契約書

再度の不倫予防策

倫が発覚したことによって離婚に至る夫婦もいますが、子供のため、配偶者に対して愛情が残っている、離婚後の生活が心配等の事情によって、婚姻継続という選択をする夫婦も多々います。

そして、婚姻継続という選択をした場合、配偶者に不倫をされた被害者がもっとも憂慮することは、再度不倫問題が起こることでしょう。

もちろん、一度の不倫で懲りて真摯に反省し、二度と不倫を行なわいという人も多いでしょうが、当事務所がご相談やご依頼を受けてきた中には、中毒症状であるかのように不倫を繰り返す人がいることも確かです。

そのような不倫中毒症状の配偶者の場合、違約金を設定するなどした示談書を作成して元不倫相手の行動を抑止したとしても、また新たな不倫相手を見つけてくる可能性がありますので、その予防が必要となります。

配偶者の元不倫相手と違約金を設定した示談書を交わした場合、以下のような文例となることが多いでしょう。

  • ※示談書文例
  • 乙(元不倫相手)は丙(配偶者)と不倫関係を清算し、丙と二度と不倫関係を持たないことを誓約する。
    乙が前記誓約に違反した場合、甲(被害者)に対し、金100万円の違約金を支払うことに合意する。

つまり、この示談書は不倫の被害者と元不倫相手間の約束ですから、この示談書で予防できるのは、配偶者と元不倫相手間の再度の不倫関係のみであって、配偶者が元不倫相手以外の別の異性と関係を持った場合には、何の役にも立ちません。

となりますと、示談書を交わすことによって元不倫相手の行動を抑止することも大事ですが、それと同時に不倫相手と交わした示談書のようなものを配偶者と交わさなければ、配偶者の新しい不倫関係を予防することはできないということになります。

作成時の注意点

は、配偶者の再度の不倫を予防するための契約書を作成するにあたって、どのような点に注意すればいいのでしょうか?

無効な記載を排除する

このような契約書を作成する目的は「再度の不貞行為があった場合は、○○というペナルティが生じる」と記載することで、配偶者の行動を抑止することと、実際に再度不貞行為があった場合に備えるということにあると言えます。

しかし、この「○○というペナルティ」が公序良俗に反する等で法的に無効である場合、その契約書は何の意味も持たないことになります。

例えば、「再度の不貞行為があった場合は、死んで詫びます」という記載をし、それに両者が合意して署名捺印したとしても、そのような約束は公序良俗に反して無効(もちろん死んで詫びる必要はないです)ですが、このような極端な例ではなくとも、以下のような無効な記載が散見されます。

離婚に同意する旨

夫が不倫をしたことによって、夫婦間で以下のような文例の契約書を作成したとしましょう。

  • ※契約書文例
  • 乙(夫)に再度の不貞行為があった場合、甲(妻)からの請求があれば、乙は異議を唱えずに離婚に合意する

このような文例の契約書を作成した場合であっても、仮に夫が再度不倫をして、妻から離婚を請求されたとしても、この条項自体は無効(夫は離婚に応じる必要はない)であると考えられます。

というのも、協議離婚は、夫婦双方による離婚意思の合致(離婚の合意)と離婚の届出(離婚届の提出)によって効力が生じるわけですが、その離婚意思は、離婚届作成時はもちろんのこと、離婚届受理の時点でも合致している必要があります。

つまり、例え契約書に「再度の不貞行為があった場合は離婚に合意する」との記載があったとしても、再度の不貞行為発覚後に一方が離婚を拒否すれば、強制的に離婚届を提出することはできません。

なお、不貞行為は民法が定める離婚原因のひとつですので、仮に当事者間での離婚(協議離婚)を拒絶されたとしても、調停を経て訴訟まで提起すれば、裁判所が強制的に離婚を認める可能性はあります。

高額すぎる違約金

通常、このような契約書のペナルティ部分は金銭(違約金)を記載するものですが、一般論として不貞行為が原因で離婚に至ったとしても、慰謝料の額は多くても300万円~500万円程度であり、それ以下の金額になることも多々あります。

それにも関わらず、「再度の不貞行為があった場合は、慰謝料として金2000万円支払う」などと記載している場合、年収何億とかの人を除けば、慰謝料が何千万円ともなるのは常識の範囲外で、突拍子もない金額ですから、公序良俗に反して無効とされる可能性が高いと言えます。

このように、いざというときに無効とされる契約書では作成する意味が全くないということになります。

また、基本的には公序良俗に反するなどの例外を除けば違約金の額を変更することはできません(民法第420条第1項)ので、あまり低額に設定しては実際に受け取る際に後悔されるでしょうし、何よりも再度の不貞行為の抑止力となりません。

よって、高額過ぎず、低額過ぎずという金額を設定する必要がありますので、そのケースにおける慰謝料額の2倍~3倍程度(最大でも1000万円以下)を違約金として設定されることをお勧めします。

夫婦の契約取消権

法第754条には夫婦間の契約取消権について、「夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも夫婦の一方からこれを取り消すことができる」と記載されています。

この条文を素直に読めば、「次に不貞行為があったら慰謝料300万円を支払う」などと記載しても、いざ請求すると「夫婦間でした契約はいつでも取り消すことができるのだから、慰謝料を支払うという契約は取消します」と言われて終わりのように感じます。

しかし、以下のような判例がありますことから、実際に違約金の履行を請求する際に夫婦関係が破綻していた場合には、民法第754条による取消権は行使できないものと考えられます。

  • ※参考判例(最判昭和42・2・2)
  • 婚姻中とは、単に形式的に婚姻が継続していることではなく、 形式的にも、実質的にもそれが継続していることをいうものと解すべきであるから、婚姻が実質的に破綻している場合には、それが形式的に継続しているとしても、本条の規定により、夫婦間の契約を取り消すことは許されないものと解するのが相当である

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